業界分析
最低賃金改定に対する企業の動向調査(2007年10月)
2007年11月29日掲載 (帝国データバンク)
2割弱が給与見直し、うち「最低賃金より高い時給で採用」企業が7割超〜給与見直し企業の6割が「経営圧迫」を懸念〜
【調査の背景・概要】
2007年10月に最低賃金が改定された。今年度の改定は、最低賃金での収入が生活保護費を下回る逆転現象なども議論され、近年にない引き上げ幅となっているため、収入増加による消費活性化が期待される一方、人件費上昇による企業収益の悪化などが懸念されている。
そこで、給与体系の見直しなど最低賃金の引き上げに対する企業の動向について調査を実施した。調査期間は2007年10月23日〜31日。調査対象は全国2万242社で、有効回答企業数は9,891社(回答率48.9%)。
そこで、給与体系の見直しなど最低賃金の引き上げに対する企業の動向について調査を実施した。調査期間は2007年10月23日〜31日。調査対象は全国2万242社で、有効回答企業数は9,891社(回答率48.9%)。
給与体系を見直した企業は2割弱、うち「最低賃金より高い時給で採用している」企業が76.4%
最低賃金改定後の給与体系について、「見直していない(検討していない)」企業は9,891社中6,846社(構成比69.2%)と7割近くにのぼった一方、「見直した(検討している)」企業は1,607社(同16.2%)となった。
給与体系を見直した企業を業界別にみると、『農・林・水産』30.8%(8社)、『小売』26.1%(115社)、『運輸・倉庫』19.4%(67社)、『製造』18.2%(515社)、『サービス』17.5%(233社)などで割合が高くなっているが、『金融』7.4%(9社)や『不動産』8.3%(20社)では1桁台となるなど、業界により対応が分かれた。
給与体系の見直しについて企業からは、「売上高人件費率が高い業界は労務倒産しかねない」(運輸、埼玉県)といった意見のほか、製造業界からは「外国人研修・実習生を雇用するメリットが低下する」(機械製造、富山県)などの声が聞かれた。
一方、「労働単価の上昇を工夫により時短で吸収したい」(飲食料品卸、北海道)、「能力、意識向上、資格重視に変更する」(建設、香川県)といった対応をとる声も聞かれた。
また、給与体系を見直した理由について尋ねたところ、「最低賃金では採用していないが、他社の引き上げにあわせて人材確保のため給与体系を見直す」と回答した企業が1,607社中1,228社、構成比76.4%となり、「最低賃金で採用しているため、給与体系を見直す」企業の同16.7%(268社)を大きく上回る結果となった。
最低賃金での採用の有無にかかわらず人事評価も含めた給与体系の見直しが行われており、雇用環境のひっ迫で人手不足感が強まるなか、最低賃金改定は人材確保にも影響を与えている。
給与体系を見直した企業を業界別にみると、『農・林・水産』30.8%(8社)、『小売』26.1%(115社)、『運輸・倉庫』19.4%(67社)、『製造』18.2%(515社)、『サービス』17.5%(233社)などで割合が高くなっているが、『金融』7.4%(9社)や『不動産』8.3%(20社)では1桁台となるなど、業界により対応が分かれた。
給与体系の見直しについて企業からは、「売上高人件費率が高い業界は労務倒産しかねない」(運輸、埼玉県)といった意見のほか、製造業界からは「外国人研修・実習生を雇用するメリットが低下する」(機械製造、富山県)などの声が聞かれた。
一方、「労働単価の上昇を工夫により時短で吸収したい」(飲食料品卸、北海道)、「能力、意識向上、資格重視に変更する」(建設、香川県)といった対応をとる声も聞かれた。
また、給与体系を見直した理由について尋ねたところ、「最低賃金では採用していないが、他社の引き上げにあわせて人材確保のため給与体系を見直す」と回答した企業が1,607社中1,228社、構成比76.4%となり、「最低賃金で採用しているため、給与体系を見直す」企業の同16.7%(268社)を大きく上回る結果となった。
最低賃金での採用の有無にかかわらず人事評価も含めた給与体系の見直しが行われており、雇用環境のひっ迫で人手不足感が強まるなか、最低賃金改定は人材確保にも影響を与えている。

給与体系見直し企業の6割が「経営圧迫」を懸念
給与体系見直しによる企業への影響については、「総人件費が増加するため、経営圧迫要因になる」と回答した企業が「見直した(検討している)」と回答した企業のうち60.0%(964社)と、6割に達している。相対的に賃金の低い業界や非正規社員比率が高い業界で経営圧迫に対する懸念が広がっている。
また、規模別にみると、中小企業で経営圧迫の懸念が強まっている。規模間格差が顕在化しているなか、最低賃金の引き上げは総人件費の増加を通じて中小企業の経営に圧迫感を与え、一層の規模間格差の拡大が懸念される。
また、規模別にみると、中小企業で経営圧迫の懸念が強まっている。規模間格差が顕在化しているなか、最低賃金の引き上げは総人件費の増加を通じて中小企業の経営に圧迫感を与え、一層の規模間格差の拡大が懸念される。

従業員採用時の最低時給は全体平均902円、最低賃金を215円上回る
従業員を実際に採用するときの最も低い時給を尋ねたところ、全体平均は約902円となり、改定後の最低賃金の全体平均687円を約215円上回った金額となっている。
都道府県別で比較すると、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最も大きい『東京都』(約1,033円(+294円))から最も小さい『青森県』(約732円(+113円))まで、すべての都道府県で100円以上最低賃金を上回っている。
制度として定められている最低賃金と、採用時時給の実態との間で乖離がみられ、最低保障としての最低賃金の役割が改めて問われる結果となった。
都道府県別で比較すると、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最も大きい『東京都』(約1,033円(+294円))から最も小さい『青森県』(約732円(+113円))まで、すべての都道府県で100円以上最低賃金を上回っている。
制度として定められている最低賃金と、採用時時給の実態との間で乖離がみられ、最低保障としての最低賃金の役割が改めて問われる結果となった。

今回の引き上げ額、最低限の生活の維持には「低い」が26.3%
最低賃金改定は生活保護費との比較のなかでも議論が行われた。そこで、今回の最低賃金の引き上げ額は、最低限度の生活を維持していくうえで、妥当と思うかどうかを尋ねたところ、「妥当」と回答した企業が40.9%(4,049社)にのぼり、「低い」と回答した企業(26.3%、2,600社)を大きく上回った。「高い」は3.9%(382社)にとどまっており、人件費の増加要因となりうる改定にもかかわらず、今回の最低賃金の引き上げ額は、社会的にみて最低限の生活を維持する必要性から、総じて受け入れられている様子がうかがえる。
地域別では、「低い」と回答した企業は多くの地域で全体平均を下回っているが、『南関東』(29.4%、998社)と『北海道』(27.8%、143社)の2地域では「低い」と感じている企業が比較的多かった。また、『九州』の19.5%(151社)をはじめとして、『四国』(22.5%、67社)、『中国』(23.7%、148社)といった西日本地域では、引き上げ額を「低い」と感じる割合が相対的に少ない。
最低賃金制度に対して、「最低賃金を上げることで、産業構造の転換を促すべき」(機械製造、徳島県)や「消費停滞やデフレからの脱却にとっても賃上げは必要」(機械・器具卸、埼玉県)といった肯定的な意見が挙がる一方で、「自由経済の中で国が賃金を決めるのは疑問」(建設、栃木県)という否定的な声もみられた。また、「本当は『低い』にしたかったが、現状では『妥当』を選択せざるを得ない」(出版・印刷、北海道)、「支払う企業の成長なくして実現は難しい」(建設、北海道)といった意見も多く、人びとが最低限度の生活を維持していくためにも必要性は感じつつも、現実的な対応に困難さを感じている様子がうかがえる。
地域別では、「低い」と回答した企業は多くの地域で全体平均を下回っているが、『南関東』(29.4%、998社)と『北海道』(27.8%、143社)の2地域では「低い」と感じている企業が比較的多かった。また、『九州』の19.5%(151社)をはじめとして、『四国』(22.5%、67社)、『中国』(23.7%、148社)といった西日本地域では、引き上げ額を「低い」と感じる割合が相対的に少ない。
最低賃金制度に対して、「最低賃金を上げることで、産業構造の転換を促すべき」(機械製造、徳島県)や「消費停滞やデフレからの脱却にとっても賃上げは必要」(機械・器具卸、埼玉県)といった肯定的な意見が挙がる一方で、「自由経済の中で国が賃金を決めるのは疑問」(建設、栃木県)という否定的な声もみられた。また、「本当は『低い』にしたかったが、現状では『妥当』を選択せざるを得ない」(出版・印刷、北海道)、「支払う企業の成長なくして実現は難しい」(建設、北海道)といった意見も多く、人びとが最低限度の生活を維持していくためにも必要性は感じつつも、現実的な対応に困難さを感じている様子がうかがえる。

【 今回の最低賃金改定のポイント 】
国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度。改定後の最低賃金は全国平均で14円引き上げられ時給687円に、地域別では都道府県ごとに7〜20円引き上げられ時給618〜739円となっている(産業別最低賃金等は別途定められる)。
国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度。改定後の最低賃金は全国平均で14円引き上げられ時給687円に、地域別では都道府県ごとに7〜20円引き上げられ時給618〜739円となっている(産業別最低賃金等は別途定められる)。






