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「初めてのことでも「場馴れ」しておく」 ライフハックス心理学 第7回

2009年11月19日掲載 (アスキー・メディアワークス

「はじめての状況」でも緊張せずに行動するには?
 ふつうの人は、初めてのことに対しては緊張するものです。初めてのデートは緊張しますし、初めてのスピーチは緊張しますし、初めての運転も緊張します。やったことがないことは、当然のことながら成功したことがないため、どうしていいのかわからず、緊張してしまうのです。

 緊張は当然ストレスになりますし、度を超したストレスが、物事をこなす助けになるはずがありません。
 デートで過度に緊張していれば、話は面白くなく、ギクシャクしてお互いがつまらない思いをしてしまうでしょう。スピーチで過度に緊張していても、結果は同様です。運転で過度に緊張していては、事故を起こすかもしれません。

 誰でも初めてのことに緊張するのは当然ですが、馴れていけばそれほど緊張せずに済むのも、また自然の成り行きです。ですから、緊張による過度のストレスから解放される一つのハックとしては、「場馴れする」ことが挙げられます。

 デートも場数を踏めば、どうすればいいかの勘どころを、脳の方で覚えておいてくれますから、それほど緊張せずに済みます。スピーチなどは特にそうです。運転にいたっては、ベテラン・ドライバーなどは緊張感を保つ方が難しいので、それがかえって事故のもとになるほどです。
 では、場数を踏めば緊張しなくなるとしても、まったく初めてのことに緊張するのは避けられないのでしょうか。

 ここに、ちょっとした方法があります。「初めてのこと」に緊張するのは仕方がないにせよ、初めてのことでも必ずしも初めてではない、という可能性はあります。

 どういうことかと言いますと、たとえばデートをするのは生まれて初めてかもしれませんが、異性としゃべるのはそうではないでしょう。それに、異性と出歩くのは初めてであっても、友達と出歩くのは、初めてではないはずです。このように、まったく同一の経験ではなくても、似たような役に立つ記憶はあるものです。

 スピーチや運転でも同様です。それらは自分にとって初めてすることであっても、似たような経験や、応用の利くやり方のひとつくらいは誰でも持っているものです。たとえばスピーチであれば、小学校や中学校で、人を前に何らかの「発表」をしたことくらいはあるでしょう。そのときに「困った」経験を持っているなら、それにどう対処したかを思い出すだけでも、緊張感は軽減されます。初めてのことだけれど、まったく初めてのことでもないと、気がつくからです。

 その意味で、いつもある経験を、他の行為にも応用できないかどうか、イメージしてみるのはいいことです。そういった記憶の役立て方が、将来のストレスや過度の緊張から、自分を守ってくれることでしょう。

初めての体験でも似たような経験で応用が可能

初めての体験でも似たような経験で応用が可能

記憶の活用で未来への不安を取り除く
 上記のハックは、単なる緊張に対する気休めのようにも思われるかもしれません。しかし、そうではないという仮説があります。それは、脳の中で空間記憶に深く関与している、海馬という場所がストレス抑制にも関係している、という報告によります。

 海馬がストレス抑制機能を有していることは、ネズミの海馬切除実験から明らかになっています。ネズミに電気ショックを頻繁に与えると、そのネズミには胃潰瘍ができます。ストレスが大きいほど、胃潰瘍が大きくなることから、ネズミがどの程度ストレスを感じているか、あるいはストレスに対処できているかを、これで知ることができます。

 そこで、海馬を切除したネズミと、正常な海馬を持っているネズミの、両方に同じ程度のストレスを与え続けるという実験を行ったわけです。その結果、海馬を切除されたネズミの胃潰瘍は、明らかに大きくなっていたという実験結果が得られました。
 海馬というのは、空間に関する記憶を司るところだというのは、すでに述べたとおりです。ネズミの場合なら、自分が身を置いたことのある空間ではどんなことが起きるかを、海馬が記憶してくれるというわけです。

 つまり、海馬を持っているネズミならば、そこで起きる「ストレス」にも覚悟して身構えることもできますが、海馬がないとその空間に関する記憶も蓄積されないため、対処の仕方も学習しようがないというわけです。この「空間記憶」が一般に「場馴れ」と言われているものでしょう。

 そして、「場馴れ」は応用可能です。よく言われているとおり、たとえばバドミントンが上手な人は、テニスを始めても覚えが早いでしょう。人間は、まったく同じ経験をしたことがなくても、他の経験を新しい行動のための、代替経験とすることができるのです。要するに、初めてやることも、必ずしも初めてではない、ということになります。

 海馬をはじめ、人間の脳はそれだけ、応用が利くように記憶を保存してあるのです。応用はむろん、ストレスに対しても効果を発揮するでしょう。テニスを始めるときに、運動自体を生まれて初めてする人に比べれば、バドミントンとはいかなくても違うスポーツ、たとえば野球でもやったことのある人の方が、過度の緊張をせずに済むでしょう。上達も早いに違いありません。

 人は、未来の出来事がうまくいくかどうか考えることで、不安になります。その不安が、ストレスになります。しかし、その未来に対する不安は、記憶という過去の経験を活用することで、解消することができるのです。

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「人間関係に傷ついたら唐辛子を食べる」 ライフハックス心理学 第8回

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アスキー・メディアワークス
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