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法務・労務

一般社団法人制度施行でどうなる? 資産流動化スキームのビークルとしての有限責任中間法人

2008年9月23日掲載 (ビジネス法務

はじめに
不動産や金銭債権の流動化では,いわゆる倒産隔離のための仕組みの一つとして,資産を取得する合同会社や特定目的会社などのSPCの親法人として,有限責任中間法人を利用するスキームが実務上,広く利用されている(※1)。
平成20年12月1日から一般社団法人制度が施行される。一般社団法人制度が施行されると,中間法人法は廃止され(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という)1条),中間法人制度は一般社団法人制度に移行するとともに,既存の有限責任中間法人は,一般社団法人となり,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団・財団法人法」という)の適用を受けることになる(整備法2条1項)。そこで,一般社団法人制度が施行された後は,資産流動化のスキームにおいて利用されている有限責任中間法人についても一般社団法人への移行が必要となり,資産流動化の実務に影響が生じることになる。
本稿では,まず,一般社団法人が有限責任中間法人と同様に資産流動化のスキームで倒産隔離の仕組みとして利用できるか否かについて考察を行った上で,一般社団法人への移行に関して有限責任中間法人を用いた既存の資産流動化スキームで必要となる手続を解説し(※2),最後に倒産隔離の仕組みとして利用する場合の有限責任中間法人と一般社団法人の主な相違点について解説する。
なお,文中の意見にわたる部分は筆者らの私見であり,必ずしも筆者らの所属する法律事務所としての意見というわけではないことをお断りさせていただく。


(※1)有限責任中間法人を利用した倒産隔離の仕組みについては,西村ときわ法律事務所(現西村あさひ法律事務所)編『資産・債権の流動化・証券化』(金融財政事情研究会,2006)26頁以下が詳しい。
(※2)本稿では資産流動化において資産を取得するSPCの親法人として有限責任中間法人が利用された場合を念頭に解説を行うが,資産流動化において資産を取得するSPCとして有限責任中間法人が利用された場合や,資産流動化以外の取引において倒産隔離の観点から有限責任中間法人が利用された場合についても,同様に一般社団法人への移行に伴う手続が必要となる。
一般社団法人制度施行でどうなる?
資産流動化スキームのビークルとしての有限責任中間法人
一般社団法人制度施行でどうなる?
資産流動化スキームのビークルとしての有限責任中間法人
証券化における一般社団法人の利用可能性
(1)SPCの倒産隔離と親法人のあり方
資産流動化においては,SPCについて,いわゆる倒産隔離(※3)を図る必要がある。SPCの倒産隔離を達成するための一つの手当てとして,SPCの議決権をオリジネーターその他の案件関係者の影響から遠ざけ,SPCの議決権を通したオリジネーターその他の案件関係者の影響力を遮断することが必要であると考えられている。
SPCの取締役などを案件関係者から独立した者とすることや定款によってSPCの目的の範囲を限定することで,SPCが倒産状態に陥ることや投資家の利益を害するような行為を行うことを防ごうとしても,SPCの株主あるいは社員が定款変更や取締役などの選解任権を行使することによってそのような仕組みが破壊されてしまうのでは,投資家の利益を保護することができないからである。
他方で,SPCの親法人の運営に係る費用や親法人がSPCの株式その他の持分を取得するための費用については,資産流動化に係るコストであることから,一般的には資金調達をするオリジネーターの負担とすることが想定されることが多いであろう。
もっとも,例えば,SPCの親法人として株式会社を設立し,オリジネーターが出資をすることでそのコストを賄おうとすると,オリジネーターは株主としてSPCの親法人の議決権を有することとなり,ひいてはSPCに影響力を及ぼすことが可能となってしまう。
そこで,SPCの親法人となる者の制度設計として,議決権を行使する者と資金の出し手とを別の者とできること(議決権を行使する者の地位と資金の出し手の地位とが分離されていること)が望まれるのである。

(2)SPCの親法人としての有限責任中間法人
有限責任中間法人は,制度上,基金の拠出者の地位と社員の地位とが結びついておらず,基金の拠出者は議決権を有しない。そこで,出資はするが議決権を有しない者を制度的につくりだすことができると評価されている(※4)。
現在の資産流動化の実務においては,このような有限責任中間法人の特性を利用して,SPCの親法人として有限責任中間法人を設立し,有限責任中間法人の社員は,案件関係者とは独立した会計士等の第三者とし,オリジネーターは,有限責任中間法人の維持・設立に必要となる基金を拠出するに止めることで,SPCの倒産隔離を図りつつ,親法人の運営等に必要となるコストをオリジネーターが負担するということが広く行われている(※5)。

(3)SPCの親法人としての一般社団法人
それでは,一般社団法人制度が施行された後に,これまでの有限責任中間法人と同じように一般社団法人を利用することで,SPCの倒産隔離を図ることが可能であろうか。
一般社団法人の社員総会における議決権は,社員のみが有することとされており,定款に特段の定めのない限り,各社員が一個の議決権を有することとされている(一般社団・財団法人法48条)。社員は,定款の定めるところに従い経費を支払う義務を負うが(一般社団・財団法人法27条),それ以外に基金の拠出義務等の責任を負うこととはされていない。そして,一般社団法人の運営に必要な資金は,一般社団法人が借入等によって調達するか,基金を受け入れることにより賄うことになる(一般社団・財団法人法131条以下)。一般社団法人が基金を受け入れる場合であっても,基金は一種の外部負債であって,基金の拠出者の地位は一般社団法人の社員たる地位と結びついていない(※6)。
このような一般社団法人の特性に鑑みると,一般社団法人についても,有限責任中間法人と同様に,出資はするが議決権を有しない者を制度的につくりだすことができるものとして,SPCの親法人として利用することが可能ではないかと考えられる(※7)。


(※3)倒産隔離という用語は,多義的なものであるが,ここでは,SPCの倒産からのアセットの信用力の隔離という意味で用いる。
(※4)藤瀬裕司『新しい流動化・証券化ヴィークルの基礎と実務』(ビーエムジェー,2006)82頁。
(※5)かつては,SPCの親法人として,ケイマン諸島法人(ケイマンSPC)とチャリタブルトラストを利用するスキームが採用されることが多かった(西村ときわ法律事務所編・前掲注1・24頁参照)。近時は,日本国内で取引を完結することができるという利点があることから,有限責任中間法人をSPCの親法人として利用する案件が多いが,ケイマンSPCを利用する案件も存在する。
(※6)新公益法人制度研究会編著『一問一答公益法人関連三法』(商事法務,2006)91頁。
(※7)藤瀬裕司「一般社団法人制度の創設と資産流動化への影響」金融法務事情1768号16頁も「一般社団法人と有限責任中間法人とは,基本的な制度設計において同一と言うことができる」と述べ,結論として一般社団・財団法人法の施行後は一般社団法人をSPCの親法人として利用することを推奨している。また,格付機関のスタンダード&プアーズも,一般社団・財団法人法の施行に関連して,「新しい倒産隔離SPVとしての一般社団法人の適格性,および有限責任中間法人をSPVとして利用している既存の証券化案件への影響を慎重に検証した結果,いずれの点も格付け上問題ないものと判断している」との見解を平成18年6月26日付のレポートの中で公表している。
既存の有限責任中間法人に求められる事項
以上のように,一般社団法人制度が施行した後には,SPCの親法人として一般社団法人を利用することが考えられるが,資産流動化の既存のスキームや今後組成されるスキームに一定の影響が生じることは避けられない。以下では,まず,有限責任中間法人を用いることによってすでに組成されている資産流動化のスキームに対して,一般社団・財団法人法の施行と中間法人法の廃止がいかなる影響を与えるかについて整理する。
この点,既存の有限責任中間法人は,整備法の施行日(一般社団・財団法人法の施行日と同日)以降は,特段の手続を要することなく一般社団・財団法人法の規定に基づく一般社団法人として存続するものとされている(整備法2条1項)。したがって,後述のとおり,有限責任中間法人と一般社団法人の間には相違点が存在し,一般社団・財団法人法の施行前とは異なる手続や事務が必要となる場面もあるものの,基本的には既存のスキームを維持したまま運営を続けることが可能である場合が多いものと考えられる。
もっとも,既存の有限責任中間法人が一般社団法人に移行するに際しては,次の手続が必要となることに留意が必要である。

(1)名称の変更
一般社団法人はその名称中に「一般社団法人」という文字を用いなければならない(一般社団・財団法人法5条1項)。この点,既存の有限責任中間法人が整備法2条1項により一般社団法人として存続する場合については,一般社団法人に移行した後ただちに名称を変更することまでは求められていないが,一般社団・財団法人法の施行日の属する事業年度の終了後最初に招集される定時社員総会の終結のときまでに,「一般社団法人」という文字を用いた名称に,その名称を変更することが必要となる(整備法3条1項)。
したがって,一般社団・財団法人法の施行日である平成20年12月1日の属する事業年度の終了後最初に招集される定時社員総会において,名称変更のための定款変更を決議することが必要となることに留意が必要である。

(2)登記手続
一般社団法人は一般社団法人として登記をすることが必要となるが,既存の有限責任中間法人の登記は,整備法2条1項の規定により存続する一般社団法人の登記とみなされることになるため(整備法22条1項),一般社団法人に移行した後も登記をし直す必要は生じない。
もっとも,上記(1)で述べた名称変更に係る定款変更がなされた場合には登記が必要となり(整備法22条3項),さらに,かかる名称変更の登記をする際には,当該登記と同時に,有限責任中間法人の理事,代表理事および監事の全員について,理事の氏名,代表理事の氏名および住所,監事の氏名の登記をしなければならないものとされている(整備法22条4項,一般社団・財団法人法301条2項5号・6号・8号)。
したがって,既存の有限責任中間法人については,一般社団・財団法人法の施行日の属する事業年度の終了後最初に招集される定時社員総会後において,変更された名称,理事の氏名,代表理事の氏名および住所,監事の氏名について,登記をしなければならないことに留意が必要である。

(3)コベナンツ対応
既存の資産流動化案件においては,倒産隔離の観点から,有限責任中間法人に関する多様なコベナンツ(誓約)が定められていることがある。
ここまで述べてきたように,有限責任中間法人から一般社団法人に移行する際には,法令上,定款変更や登記手続が必要となる関係で,これらのコベナンツへの対応が必要となる可能性がある。例えば,有限責任中間法人の定款変更がなされた場合には,格付機関その他の案件関係者に通知すべき旨の規定やそもそも有限責任中間法人による定款変更を制限する規定が関連契約に定められていることがある。その場合,前者については,前記(1)で述べた定款変更を行うに先立って通知義務の履行が必要となり,後者の場合には,例えば,整備法の規定に基づく名称変更に係る定款変更については,コベナンツ違反を構成しないことを確認する覚書を関係当事者との間で締結するといった手当てをすることが必要となりうる。
したがって,対応の要否や方法,対応を怠った場合のスキームへの影響は各事案の具体的な規定次第であるが,有限責任中間法人の名称変更に係る定款変更などの有限責任中間法人から一般社団法人へ移行する際に必要となる手続が,既存の有限責任中間法人に関するコベナンツ規定に該当しないか,遅くとも,これらの手続が必要となる一般社団・財団法人法の施行日の属する事業年度の終了後最初に招集される定時社員総会の日までに確認しておく必要がある。既存の資産流動化案件について,必要に応じてリーガルアドバイザーの助言を得ながら,関連契約を精査することが求められよう。

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